2006年教育基本法のメモ的解説

参照旧教育基本法全文(穴埋め)  2006年教育基本法全文  教育秩序の再編と「新たな『公共』」

 平成18(2006)年12月22日、全部改正教育基本法が法律第120号として公布・施行。今後、いわゆる教育再生3法案の成立(第166国会中に可決予定。「予定というのはイヤだが」)や中央教育審議会の議論「教育基本法の改正を受けて緊急に必要な教育制度の改正について」<平成19(2007)年3月10日(教育再生会議の焼き直しでなんらの実りある議論になっていない)>を踏まえ、学習指導要領が改訂されることになり、この2006年教育基本法の政策的理念が反映される。改訂に向けての背景が「美しい国」実現にあるという、よくわからない「国家目標」に基礎付けられているのは、まことに遺憾。

1 指導理念の適確性を備えているか

 教育を取り巻く環境が大きく変化したのは、時代の変化として当然であろう。また、世間では、子どものモラルや学ぶ意欲の低下、家庭や地域の教育力の低下などが、データの裏付けなく無責任に指摘され、それが法律改正に反映されてしまっている嫌いがある。このような中で、教育基本法は将来に向かって新しい時代の教育的指導理念を明確に示しているのかどうか。理念法から単なる政策法規に転換しているところも問題。感覚的にいって申し訳ないが、他の基本法、たとえば「環境基本法」などのような法律と同じランクの法律に位置付けられたように思われる。それだけ、理念法としての輝く法的性格が薄れてしまったといえよう。

2 実際的問題

 2006年教育基本法は、「人格の完成」や「個人の尊厳」などの普遍的な教育理念を大切にはしている。また、「知・徳・体」を重視した教育目標が掲げられている。また、「生涯学習の理念」や「家庭教育」、あるいは「学校、家庭、地域住民等の連携協力」などの条項が新設され表面的には美辞麗句が掲げられている。教員として、今日的な教育課題を解決するための重要な理念はあることにはある。だがこの2006年教育基本法の成立が、現実の教育現場の問題解決に結びつくかどうかは未知数。旧法でも変らないだろう。

 A 教育の目的・目標について

「教育の目的」(第1条) 「人格の完成」+「国家、社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」

●第1条の目的実現のための第2条目標の設定 「人格」の中身が確定されているのではないか。なお、以下の第2条は「今日重要と考えられる具体的な資質」といえるかどうかは批判的に検討されるべきである。

「教育の目標」(第2条)

 @幅広い知識と(    )を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな(        )を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
 この@が、知・徳・体を表現しているのはすぐわかるところである。
 A個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、(    )を重んずる態度を養うこと。
 職業、生活、勤労などが目標として挿入されているところが新鮮。
 B正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、(       )に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
 いうまでもなく、「公共の精神」が新しく挿入されている。公共の精神は、前文にも表現されており、それだけ強調されて養われるべき精神ということになる。

 C生命を尊び、自然を大切にし、(      )に寄与する態度を養うこと。
 ここでは、環境保全がキーワード。第15期中教審以来の主張。いわゆる「から・ついて・ため」。

 D伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を(      )とともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
 もめにもめて決定された表現。「わが国と郷土を愛する」のところである。伝統、文化、他国尊重など、第15期中教審以来の主張。

B 新しく追加された事項

★「生涯学習の理念」(第3条)
  「あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない」。

★「家庭教育」(第10条第2項)
  「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない」。

★「幼児期の教育」(第11条)
  「幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない」。

★「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」(第13条)
  「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする」。

C 今回変更された事項

◆「教育の機会均等」(第4条第2項)
  「障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない」。

◆「義務教育」(第5条第2・3項)
  「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされている基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う」。

◆「学校教育」(第6条第2項)
  「教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない」。

◆「教員」(第9条)
  「教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」。
  「教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない」。

◆「宗教教育」(第15条第1項)
  「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない」。

◆「教育行政」(第16条)
  「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない」。
  17条第1項によって、教育振興基本計画の策定の規定が導かれる。教育の適切な実施を保障し、その振興を図るため、教育行政の在り方や責務、教育振興基本計画の策定などについて国会に報告し、公表が求められている。

リンク:文部科学省の教育基本法関連ページ「教育基本法について」

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