模擬授業のポイント

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 教員には、職業上必然的に、優れた教科指導の力が求められている。現在では、ワタクシたちに即戦力として通用する指導を要求する自治体が多い。しかしこのことは、教育実習しか教育経験のないもの、社会人で講師経験のないものを採用しないということを意味しない。荒削りでも、「このかたになら安心して仕事を任せられる」と認められればいいのである。討論や論文と同じく、よい意味で印象に残る模擬授業を採点官に見せようではないか。

あなたの合否を占う水晶玉

 与えられた時間で自分をどのように表現するべきか。このページでは、出題テーマにかかわらず、模擬授業に関する一般的な注意事項を実践的にまとめてみた。ワタクシが、のべ1000人以上の教採受験生の模擬授業を見て、感じたこと、注意すべきであろうと思ったことを綴っている。ここでワタクシの採点基準を示すわけではない。だが、以下の注意点が、各自治体の基準と重なり合う場合が多いであろうと予想している。

あなたの合否を占う水晶玉

 ここでの模擬授業は、校種、教科にかかわらず、ひとり5分ないし10分与えられたケースを想定している。

控えの教室や廊下に受験生が集まる。ドキドキものである。「さあ、いまからだ」。「普段着の授業」を心がけよう。どのような課題が出されるか、ここに関心が集中する。模擬授業の課題が示される時期はまちまちである。直前にようやく課題がわかる場合、1週間まえに渡される場合と多様である。どちらの場合であっても、日頃の練習の積み重ねが必要である。なぜなら、「模擬授業」は、普段行なっている「授業」とはちがい、それなりのやり方があるからである。こうしたことに触れる。

ところでワタクシたちが臨む模擬授業会場はどんな様子だろうか。自治体によって試験会場のあり方は様々であるが、大きく2つに分かれる。1つは、教壇が用意され、採点官と対峙するかたちで、他の参観者なしに行なわれる形態である。もう1つは、教室に受験生を数名入れ、受験生と採点官が見守る中、受験生が教壇に立ち、順番に模擬授業を行なうものである。

いずれにしても、自己紹介からはじまる。「受験番号○○○番、小学校を希望している○○○です」、あるいは、「受験番号○○○番、中学校(高校)○○科を志望している○○○です」である。ここに、出身大学、学部学科を組み込んでもいい。正式なものなどない。ごく普通にすれば結構である。自治体名はいわなくていい、そこで受験しているのだから。

ここまでは、「よそいきの言葉」でやる。しかし「授業」がはじまれば、いつもの調子で。挨拶からはいる。「おはようございます!」、前に児童生徒がいるつもりで、しっかり声を出そう。一番うしろの座席に届くような声が望まれる。これが基本のキ。逆にいえば、臨場感を持たせることが肝心といえる。緊張していれば、教育実習のときに指導した児童生徒の顔を思い出そう。講師をしているのなら、担当の「あの子たち」を思い浮かべよう。ということは、何年生を対象に「模擬授業」をしているのか、自覚して取り組まなければならない。

さて、採点官と対峙するかたちで、他の参観者なしに行なわれる形態の場合、授業は、まったくの一人芝居になる。児童生徒の主体性を重んじることから、児童生徒に質問し、授業を進めていく「いつもの授業」をひとりでやるのである。だれも座っていない座席に声をかけ、「A君、わかる?」、「A君、どう考える?」と進めていっていい。また、「このことみんな知っているかなぁ、知っている人、手を挙げてー」といい、ちょっと間をおいて、さも児童生徒がいる振りをして、「そうか〜、さすがだねぇ〜」といっていいのである。しかし、面接官を当ててはいけない。模擬授業では、否定的な言葉を使わない。子どもに「この問題は難しいけど〜」、「できないかもしれないが」などといわない。消極的にならない。自信あふれる授業を。そして、「ほめる」。最近の児童生徒は、ちょっと厳しくするとダメだから。

参観者ありで行なわれる形態の場合、他の受験生がいるのであるから、彼らを児童生徒と見立てていい。実際に当てていい。採点官からそのように指示があるはずである。当てられれば、こころよく応えかえそう。その対応の仕方も評価されている。では、参観者が自主的に授業をしている受験生へ質問するのはどうだろうか。これは度胸のいる行為である。その態度が採点官に「ほほう」と好意的に捉えられればいいが、「ですぎた杭」にならないとはいえない。だが、場の雰囲気、たとえば、その受験生が進行につまって困っているなど、合否を越えて「なんとかしてやりたい」と思うときがあるものである。同僚になる相手である、手をあげて発言してみよう。これを「こころの余裕」という。

あるいは、採点官が児童生徒の振りをして、突っかかってくるときがある。ワタクシたちが必死に「授業」をしているその最中に、採点官が手をあげて質問する。「なんでこんな難しい勉強するの?」。また、いきなり採点官が歩き出す。学級崩壊の初期段階を醸し出しているといえる。どんな反応をワタクシたちが見せるか、それを評価しようとしているのである。あわててはいけない。このあたりが、指導力のみせどころである。採点官が「どうみても悪ふざけのフリ」をしているなら、しっかり叱る。授業内容に対する質問には、時間との兼ね合いもあるが、児童生徒のフリをしている採点官に「納得の色」がうかがえるまで説明しよう。

児童生徒役の受験生を当てていいといったが、全員当てては困る。なぜなら、その「やりとり」は重要な教育的行為ではあるが、採点官がみたいのは、あなたの指導力だからである。また、机間巡視をしてもいいが、ワタクシは、教壇から2、3列目までで止めておくのを推奨する。あまりウロウロするのは、落ちつきがない。

黒板は必ず使おう。字の大きさは「てのひら」の大きさ。自分の思っているより大きな字を書くつもりで。5分やそこらではそれほど多くは書けない。黒板1面書けば、できすぎである。6行も書ければ立派だといえる。とりわけ、英語で道順を教える授業を指導するような場合、地図を書くと思うが、黒板の半面を使うつもりで書けばいい。図は大きく、である。漢字に注意。何年で習うか、確認しておかないと、たとえば小1対象の模擬授業であるのに、6年生ではじめて見る漢字を使わないともかぎらない。必ず指導要領で確認しておこう。

用意されたチョークは全色使おう。たとえ、「保護者会で『本校の方針』についてスピーチせよ」という課題が出題されたとしても、何も書かなければ相当マズイ。「学校で児童がケガをした。保護者に連絡せよ」というような課題であってもそうである。後者の場合、黒板に電話の絵を描く。実際にケガがあった場合、あなたならどうするか。5W1Hにしたがって、「なぜケガをしたのか」、「どのような処置をとったのか」、メモ用紙をまとめ、それから連絡するだろう。とすれば、そうしたメモ用紙を黒板に書けばいいのである。

ふつう、試験会場では、2、3色のチョークが用意されているはずである。使い残してはならない、「全部食べる」必要がある。ワタクシたちが、常日頃、重要な語句なり、文章なりを書くとき、黄色で示すように、本番でもそうした使用法を披露すべきである。だが、本番ではかなりあがっている。だから、2色以上使うのを忘れてしまいかねない。どうすればいいのか。模擬授業開始直後、すぐに使ってしまうのである。しかもすぐにチョークを手にすれば、落ち着くのである。黒板にチョークをあてれば、ふるえが止まる。

たとえば、

○月×日  保護者会開催  「本校の教育方針について」  報告者:○○○

というように、すぐに2色使って書いてしまう。こうすれば、安心して、次に進むことができよう。試験が終わってしまってから、「ああ、白しか使わなかった」では、悔やんでも悔やみきれない。

5分や10分で、課題をすべて終了することはむりである。しかし、山場は必ず踏まえたい。模擬授業の課題が手渡されたら、その本質を見抜こう。どんなテーマであっても、採点官がみてみたいところがある。それをはずしたら評価が低くなる。これはどういうことかというと、「前置きだおれ」を避けよ、ということである。たとえば、「( )や四則の混じった式の解き方を指導せよ」というテーマが出たとする。このとき、次のような受験生がいるのである。

「今日は四則の混じった式の計算をしてみましょう。みんな、昨日、掛け算と割り算習ったよね。じゃ、復習だ。A君、10÷2はいくつかな。そうそう、5だよね。よくできました。(これをB君にも当て、答えさせる。次に掛け算の例をまた2人に当て、答えさせる)」。ここまでで黒板に書く時間も含めて4分たった。「さあ、それじゃあ、この式の計算してみような」といったとき、残された時間は30秒。採点官から無情の声、「終わって下さい」。課題の一番応えてほしいところに到達しないまま終了。

どんな曲にもサビの部分がある。ヒカルさんでいえば、CMで取り上げられている箇所が聞きたいのである。最初のところも大切かもしれないが、「青い空が〜、白い旗は〜」のところが流れてこないと、聞いた気がしないのである。「ニッポンの未来はウォウ、ウォウ、ウォウ、ウォウ〜、社長さんはイェイ、イェイ、イェイ、イェイ!」のないモーニング娘は、つまらない。ワタクシたちも、模擬授業のサビをつかみ、そこを採点官に聞かさなければならない。こうしたサビの部分を、模擬授業開始後、2分半くらいで「歌う」のである。一生懸命やっていると、「えっ、もう終わり?」という感じで終了するものである。

「帰らない」。これがことのほか大切である。模擬授業終了後、恥かしい気持ちなどがこみあげてきて、すぐ教壇から立ち去りたくなる。その気持ちはわかるが、これはご法度である。採点官からコメントをいただけるかもしれない。すぐに帰らない。終われば黒板からはなれ、教壇に立ち、静かに待とう。「消さない」。黒板に書いたことは、ある意味「証拠」である。これを見て採点官から注意点を指摘されるかもしれない。教員になってから生かすことのできる採点官の言葉をたくさんもらえるほうが幸せであろう。

最後に、みなさんに提案する。「忍者になろう」。背中にリコーダー、右手に彫刻刀。左手には絵筆。うしろのポケットには地図帳をねじ込む。体育館シューズを履こうか。つねに見る、教具を見る。ワタクシたちの商売道具である。それらをフリーハンドで描けるまで離さない。描けますか、顕微鏡。描けますか、北の夜空。彫刻刀の種類がいえますか。つねに教科書を携帯し、登場する機材を研究する。受験のためじゃない、あなたを待つ児童生徒のために。

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